写真植字

写真植字とは

写真植字(写植)とは、文字を入れる作業のことである。 写真植字機を用いて文章を印刷し、版下(印刷原稿のこと)に貼り付けることで文字を入れる作業に由来する。

写植には、どのフォントを使うか・どこで改行するか・広く見てどこに配置するか、といった様々な問題が付き纏う。 本頁は、この周辺のtipsをまとめる。

フォント

漫画では一般的に、平常時のフォントは、漢字にはゴシック体、それ以外の字には明朝体を用いる。 源瑛アンチックはこのような体系のフォントである。

また、漫画では一般的に、状況や内容ごとにフォントを変える。 作者の視点に立つと、一見 あざとい ように感じるかもしれない。 しかし、読者はあまり意識していないので、積極的に変えていくと良い。

どのようなときにどのようなフォントを用いるかは、手元の何か漫画を手に取って眺めてみるとすぐにわかる。 そのため、わざわざ列挙することはしない。 ただ、「少年ジャンプ編集部」公式がフォントの使い分けをまとめている画像があるため、参考にすると良いかもしれない。

「少年ジャンプ編集部」公式のツイート

フォントを使わず、手で文字を描く表現方法を「描き文字」と言う。 主に擬音語・擬態語・特殊な台詞・叫び声・喘ぎ声等々機械的な字形では淡白だと感じるようなものに使われる。 次はすべてが描き文字である例である。 本当に手で描いているのか、素材を使っているのかは不明だが。

文字サイズ

文字サイズの単位には主に次がある。 特に漫画では「Q」が用いられることが多い。

文字の大きさは個人差に依るところが大きい。 平常時の文字サイズでも、一般的に12Qから18Qまで幅がある。 下はそれぞれ下限と上限の例である。 ただし、両者共仕上がりサイズはB5である。

フォントサイズもフォントの種類と同様、状況や内容によって変わる。 例えば、平常時は必ず15Qにしようと決める必要はない。 後述する改行や段落分けの方が重要である。

ちなみに、少し調べると「 漫画では一般的に18Qが用いられる 」という主張が見られる。 しかし、これは縮小率を予め考慮したサイズであることに注意しなければならない。 少年ジャンプを例に挙げると、下のようになる。 少年ジャンプではB4原稿に描くらしい。B4原稿の仕上がりサイズはA4であるため、下にはA4のサイズを記載した。

媒体媒体サイズ文字サイズ
原稿A4 (210x297mm)18Q
週刊誌B5 (182x257mm)16Q弱
単行本新書 (112x174mm)10Q弱

改行

文章は自然な位置で改行すべきである。 ここで言う「自然」というのは、文節で区切るということである。 例えば「ある日の暮方の事である」という文章を「ある日の暮/方の事である」と区切ると不自然である。

一般的には、平均2行・最大でも4あるいは5行に納まるよう改行される。 一繋がりの文章が4あるいは5行以上に渡る場合、二つの吹き出しに分けると良い。 ただし、説明文・説明口調あるいは読ませる必要のない文章はこれに限らない。

また、一行の長さは長くなり過ぎない方が良い。 下は一行の長さが長い例である。 (『見切り発車 総集編 壱』29頁目にて、れおん先生本人が自身のこの作品に対し「セリフ改行しろよ 一行どんだけ読ませるつもりだよ ふきだしほっそ!!」と語っているため取り上げました)

配置

大原則として、吹き出しは右から左へ読まれ・上から下へ読まれる。 つまり、時系列上過去の台詞を左上や右下に配置すべきでない。

しかし、右優先か上優先かに一般的な法則はない。 つまり、四隅に吹き出しがあった場合、右上の吹き出しの次に左上と右下のどちらを読むべきか法則はない。 これは読者に一瞬の混乱を招く可能性が高い。 吹き出しの位置関係を調整することで誘導することもできるが、なるべく右下に独立した吹き出しを配置しないことが安全である。

右から順に、台詞→絵、絵→台詞、と配置が異なるだけで受ける印象が異なる。 先に読者に伝えたい情報を右に配置すべきである。 一般的には、次の法則に則りそうである。

また、原則として、吹き出しの中の文章は原稿用紙の内枠に納める。 特に、ノド側に外れる場合、読みにくくなる可能性が高い。 吹き出し全体が外れることは避けるべきだろう。

吹き出しは交叉すべきでない。 下は吹き出しが交叉している悪い例である。 演出上の都合上、キャラクターの位置を交換できず、先に発言するキャラクターを左に配置せざるを得ない場合、脚本を再考すべきである。 例は2021年に私が描いた作品である。3年前……色々拙くて恥ずかしい。

吹き出しに吹き出しを重ねることで、「食い気味」な台詞を演出できる。 特にギャグシーンにおいて、ツッコミや意志を伝えるときに用いると良い。 また、絵に重ねることで、メタ的な障害物として扱うことができる。 キャラクターの表情を隠すことで不気味さを演出したり、手を描くのが億劫だからと手に重ねて消してしまったりできる。 下はそれぞれ吹き出しに重ねる例とキャラクターに重ねる例である。 吹き出しに重ねる例は、「文字サイズ」節・「改行」節で取り上げた例にも見られる。

吹き出しの形

吹き出しには、状況や内容に合わせて様々な種類がある。 状況や内容のうち一般的なものを列挙すると以下が挙げられる。

吹き出しを手で描くかツールを用いるかは作家・作品・状況・内容に依る。 しかし、楕円に限って言えば、なるべく手で描くか揺らぎを持たせると良い。 なるべく淡白に見せないことが重要かと思われる。 むしろ、装飾を凝っても読者は意識しない。 実際、下のような特殊な吹き出しもある。

吹き出しのしっぽは原則「発声場所」を指す。 普通は口を指すが、別の部位を指すことで演出することもある。 また、作家によっては一切しっぽを描かないこともある。 下はしっぽを描かない方の例である。 普段はしっぽを描いていても、登場人数が多い等理由でオフ台詞にならざるを得ず、誰が喋っているのかわからなくなることがある。 その場合は、吹き出しの中に各キャラのアイデンティティ(色やアイテム等)を描き、発話者を同定することがある。

参考文献




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