現場で役立つシステム設計の原則
2025年6月18日読了
Credit
花房輝鑑. (2022). ゲームをテストする 〜バグのないゲームを支える知識と手法. 翔泳社.
Summary
ゲームにおけるテストエンジニア職の紹介本。 ゲームテストの色々やテストエンジニアという職業の組織構成を紹介する。
Note
ソフトウェアテストの本がWebアプリケーションばかりで「違うんだよなあ、その方法だとゲームやらGUIアプリやらのテストはできないんだよなあ」とうんざりしていたので、ゲーム業界ではどうなっているんだろ、ということで読んでみる。
- _「課金をすることでゲームが有利になるわけではなく、ただキャラクターの見た目が変わるだけですが、そのキャラクターのファンであるユーザにとっては非常に満足度の高いコンテンツとなるのです。」_常々思うけれど、それはもうゲームじゃないんよ。いやPay to Winもゲームだとは思っていないけど。東方でもね、もう誰も「原作STG」はやってないよ(過言)。新作が出ても誰もゲームとして劣化を極めていることには指摘せず、あまつさえ「ゲーム部分は興味ない。ストーリーが気になる」と明言してしまう始末。一応ゲームなんやぞ。ゲームをやれ。
- 「狩野モデル」、要は次のような当たり前のことを言っているものだが、モデル化した人は偉いんだなあ、と思った。
- セーブ機能があるとか、バグがないとか、当然のものとして受け入れられるものはそれを満たしていても満足感には寄与せず、むしろ満たしていないと不満足感を導く。
- 画期的な機能とか、他では見ないような要素は満たされていなくてもとりわけ満足感を下げることがなく、満たしていると満足感を与える。
- 上記の魅力的な要素(「魅力的品質」と称されている)は時代が経ると皆が真似をするので市場にあふれて当然のものとして受け入れられるようになっていく……世知辛いが摂理だなあ。
- _「自動テストで新種のバグが見つかることはまれである」_テスト自動化8原則の7項目目。そう考えると、いや考えるまでもなく、人力デバッグは必要だよなあ。どうにかならないものか……ならないなあ、少なくとも現状のAIのアプローチだと。
- 正常系、準正常系、異常系。なるほど。
Impression
Amazonレビューでは「この本はテストエンジニアになる人に向けた本」のように書かれているが、どちらかというと「テストエンジニアってこういう感じだよ」という紹介本だと思う。 まあ、ノウハウ本でないことは明らかだし、多少残念ではあるが。 そういう軽い読み物だと思えば、そういうもんか、という感覚。
同じくAmazonレビューで、帯にある「属人的で闇雲な準ライのゲームデバッグはもう卒業だ!」という強い言葉を取り上げて、「本文が抽象的過ぎて経験に頼らざるを得ない属人的なテストの解決策を示していない」とも書かれているが、これも少し違うと思う。 経験に頼らざるを得ないテストも必要だが、それだけではうまくいかないので、こうやって組織化されていて、こういう工程でテストされているから、誰がテストしても良いようになっているんだよ、というのがこの本の主張だと読めるので。 まあ、確かに、「属人的……卒業」が「自動化」であって欲しいと期待するのは同意するが。 本なんでねぇ、新規性はどこ? となってしまう。 で、新規性は「そもそもゲームのテストエンジニアの本が少ない」が正解なんだろうけども。
とはいえ、テストエンジニア職の紹介本に「ゲームをテストする」というタイトルを当てるのは、ちょっと違う感じはする。
ゲームのテストエンジニアに対するimpressionは「商業ゲームのテストって大変やなあ」が9割。 他に思ったことは、「東方Projectはゲームどころか読み物ですらバグ・誤植が多いのでどうにかしろ」ということ。
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